作品名
Elements of light -それぞれの光-
アーティスト
伊賀美和子、池田宏彦、西郡友典、馬場智行、守田衣利、山下隆博
企画協力
フォルマーレ・ラ・ルーチェ
展示場所
「ロックの図書館」準備室 併設カフェ(店名未定)
作品紹介
「Elements of light -それぞれの光-」は、写真×音、音楽のコラボレーションにより写真表現の見え方、新たな楽しみ方を模索するフォルマーレ・ラ・ルーチェが企画するプロジェクト。今回は、6名(伊賀美和子、池田宏彦、西郡友典、馬場智行、守田衣利、山下隆博)の写真作品を紹介する。このメンバーによる同プロジェクトは、渋谷・日本写真芸術専門学校でこれまで3回の実績を重ね、好評を博した。写真表現の多様性と豊かさを音楽の調べとともにお楽しみください。

伊賀 美和子
小さな人形を被写体にして、これまでは、傷つき、傷つけられる思いを心象風景にして描き写真にしてきました。人間は脆い小さな存在ということをユーモラスを交えて皮肉に表現する制作意図があったからです。制作を始めて15年の間にあえてアートでそれを表現しなくてもよい大きな出来事がありました。わざわざ不幸の淵を歩かずも私たちの生活は危険に満ちていることに気づいてしまったのです。
Lifestyle Of Hurts And SicknessからLifestyle Of Health and Sustainabilityへ。 傷つき、戦ってきたから、今あるひとときの安定を持続させたいと感じ始めています。大人になっても今いる位置が正しいのか、そしていくつになっても先の風景はぼんやりしていてよく見えないのですが、ひとつの道を同じ足で歩んできたことに自信を持ちながら生きていく心をこれからも描いていきたいと思います。
「午後の曳航」
伊賀 美和子

池田 宏彦
イスラエルのネゲヴ砂漠で撮影した作品です。
砂漠の中で何カ所か場所を決めて、夜・昼・人がいる時いない時など違ったシチュエーションを同じ構図で撮影し、それらを重ね合わせて1本の映像にまとめました。
本来同じ時に一緒にはいられないものたちを、たとえかりそめにでも共存させることで、僕らが日々の暮らしの中で捉えている現実とはちょっと違う層の現実を一種の「視覚的なたとえ」として表せないかという試みでした。今回ブライアン・イーノの曲を使っているのも曲の素晴らしさはもちろんですが歌詞の中の、単純に直訳すると「君はまるで遠くからのように僕に話しかけ、僕は別の時間から選んだ印象でそれに答える」という部分がこの作品の中身と重なると感じたためです。
「echoes」
池田 宏彦

西郡 友典
旅に出ましょう。きらめきに出会いに。青い空の日に。
目の前の景色が、ときおりキラリと光って見えた気がするときがあります。
例えば、傍らに誰かがいたなら、「見て、見て! 」って指さして伝えたくなるような、気持ちがすこし持ち上がってフワリとふくらむような景色。
この写真集は、日常のなかで、旅の途中で、その時の私の目にほんの一瞬きらりと輝いて ""見えた気がした""景色の集まりです。
「青い空の日に」
西郡 友典

馬場智行
水族館の魚達を、我々の現在、或いは未来の姿を暗示するモチーフとして、水槽のアクリル壁を境界線と見立て捉えたものである。水槽の中で生きる魚達の姿から、自分達人間の存在について思考するための作品である。
「ACRYL」
馬場智行

山下隆博
北海道後志地方の岩内町に私は生まれ高校卒業までの18年間を過ごした。右を見れば羊蹄山を初めとした山々が広がり、左を見れば日本海が広がっている。そんな風光明媚な場所に私は生まれた。そして、私が生まれた1984年に隣の泊村では原子力発電施設の着工が始まった。
ルスツにはスキー場がある。共和町では畑作の風景広がっている。寿都村の海沿いには沢山の風力発電施設がある。原発はそれらと何の変わりもない当たり前の風景だった。

私が故郷を見る時にはどうしても二人の事を考えずにはいられない。

故郷に根ざし、漁師として生計を立てながらも懸命に自然の美しさと厳しさ、そしてそこに生きる人達の息づかいを丹念に描き、自身の画業を積み重ねてきた画家の木田金次郎。
そして、自身の信念に嘘をつく事なく鋭い眼差しで原発問題にしがみつく様に仕事を続け、社会的な立場においての責任の取り方を体現している写真家の樋口健二。
二人の目を通して私は故郷を見ている。それは原発問題を考える時に重要な事なのではないのかと考えている。
「吹雪の日/凪の海」
山下隆博

守田 衣利
人が産まれて初めて見るものは光。過去、現在、未来を紡いでいるのも、一筋の光。
光の先をずっとたどっていけば、ここにはもういない人、ここに産まれてこられなかった人たちに繋がっているような気がする。
人はどこからかやってきて、わたしの隣りをしばらく歩いて、彼方へと去っていく。
時間を切り取って、とじこめよう。今が永遠に続かないことはわかっている。
それがことさら悪いことでもないと知っている。きつく握りしめた手を離そう。
その柔らかい手をずっと握っていたかった けれど、時間がわたしたちを分け隔てていく。
眼を閉じれば、また会える。眼を閉じれば、鮮やかにあの光景が蘇る。
わたしは祈りの言葉をもっていない。そのかわりに、シャッターをきりつづける。
雨が水面を乱しては消えていくように、気づかれることもなく過ぎていく時を掬いとる。
「Close your eyes, make a wish.」
守田 衣利